広島大学教育学部 心理学教室

杉村 和美 先生
(発達心理学)

今の研究テーマに関心を持ったきっかけを教えてください。

 私は,自分がどのような人間で,この社会で何をして生きていくかに関する自覚である「アイデンティティ」の発達を研究しています。つねづね,人はなぜ,人生でたくさんのことを失うのに(例えば,生命,健康,友達,仕事),不安に押しつぶされずに生きているのだろうかと思ったからです。私にはそれは耐えられないが,何か自分に1つ,永続的なものがあれば,生きていけると思いました。それがアイデンティティの感覚ではないかと思い,この分野に入りました。しかしこれは後から考えたきっかけです。本当のところは,そんなことには気付かず,ただ,何かに突き動かされてこのテーマに入った,というのが実態です。

研究をしていて、おもしろいと感じるのはどのようなことですか?

 調査インタビューや観察などで,「ああ,この人はこんな風に考えて生きているんだな(いろいろ大変なことがあっても生き延びているんだな)」ということが見えると,勇気をもらった感じがします。また,研究それ自体というより,研究を通していろいろな人とコラボレーションする,その出会いにも思いがけない偶然があって,驚きます。特に,研究を通して異なる国の文化や人と出会うことは,刺激的です。研究そのものの面白さより,どちらかといえば,そういう,研究周辺のワクワクすることがらを求めて研究をしている感じです。

研究をしていて、難しいなと感じるのはどのようなことですか?

 自分の頭が足りない,と思う時。どう考えても,自分は研究者向きの頭ではないと思うのです。でも,だんだん自分とは異なる能力を持った人とコラボレーションすることができるようになり,自分に足りないところを補えるのは素晴らしいです。自分一人でできなくても,仲間がいるから大丈夫さ,と思えるようになってから,だいぶ心が楽になりました。研究では人間関係も大事なのです。

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