広島大学教育学部 心理学教室

心理学教室HPにおける臨床心理学ページ(2024)

■□臨床心理学とは・・・□■

 臨床心理学とは,ひとことで言うと困った人々の助けになるための実用的な学問といえます。
難しく言うと,ひとの発する言葉や行動の背景に思いや考えなどがあると想定し,またその後ろには発達段階としての生物学的背景や母子関係をはじめとする心理学的背景なども考慮し,悩みや問題,課題を抱える人々の心理学的理解に基づく支援までを包括する学問ということができます。

■□一緒に学ぶスタッフの紹介□■

服巻 豊 先生(ウェブサイト:研究者総覧研究室

 臨床心理学,コミュニティ心理学,精神薬理学を専門としています。心理療法は,来談者中心療法をベースとして身体の動きを用いてアプローチする臨床動作法,集団心理療法である心理劇を行っています。研究は,臨床動作法を用いたストレスマネジメント教育プログラムや慢性疼痛マネジメントの実践研究を行っています。ゼミ活動ならびにゼミでの研究として,緩和ケア(在宅緩和ケア研究会や看護師へのコンサルテーション),地域住民や対人援助職へのストレスマネジメント教育プログラムの効果検証や動作法月例会などの臨床実践に取り組んでいます。

石田 弓 先生(ウェブサイト:研究者総覧,研究室)

 臨床心理学,特に精神科や学校における心理臨床活動を専門分野としています。心理療法では,精神分析的心理療法を基盤としていますが,描画法や夢を用いた心理療法や認知療法なども適宜活用しています。研究では,個人的には描画法を専門としていますが,投映法全般に関する研究の指導も行っています。また,スクールカウンセリングなどの教育臨床に関する研究にも関わっています。

尾形 明子 先生(ウェブサイト:研究者総覧,研究室)

 認知行動療法,小児医療心理学を専門としています。子どもと子どもを取り巻く人々への支援に興味があり,現在は,学校での抑うつや不安に対する予防プログラムの開発・実施,小児がんをはじめとした病気を抱えた子どもとその家族に対する心理的支援,看護師のバーンアウト予防プログラムの開発・実施,小児緩和ケア,Parent-Child Interaction Therapy(PCIT;親子相互交流療法)に取り組んでいます。研究室では,心理的問題に対して認知や行動に焦点をあてて研究と実践を行っています。

上手 由香 先生(ウェブサイト:研究者総覧,研究室)

 臨床心理学を専門としています。特に,トラウマ,マインドフルネス,精神分析的心理療法に関心を持っています。幼少期の被虐待体験など,過去のトラウマから回復するための心理療法や,マインドフルネス を用いたワークなどに取り組んでいます。また,歴史的トラウマの次世代への心理的影響という観点から,被爆二世・三世の世代間トラウマやレジリエンスに関する研究,トラウマに関する国際比較研究,児童養護施設での調査や介入を行っています。研究室では質問紙調査の他にも,体験の語り(ナラティブ)を用いた質的研究に取り組む人も多いです。

田村 典久 先生(ウェブサイト:研究者総覧研究室

 臨床心理学分野の中で、臨床疫学や睡眠行動医学を専門にしています。個別支援では主に不眠症に対する認知行動療法を行っており、集団支援では学校・地域での睡眠健康支援を行っています。現在の研究テーマは、①幼児期における睡眠問題の健康影響、②児童生徒の睡眠健康推進のための新しい睡眠教育パラダイムの構築、③学校教員における睡眠問題の健康影響と決定要因の解明、という3つです。いずれも「睡眠」を糸口として、各世代の健康状態や生活の質を高めるための生活のあり方、地域環境のあり方を明らかにすることを目的とした研究に取り組んでいます。

安部 主晃 先生(ウェブサイト:研究者総覧,研究室)

 医療領域でのカウンセリング・心理検査や,子どものプレイセラピーを中心に臨床活動をしています。特に,精神分析的心理療法や心理社会的な発達理論を基盤としています。研究では,主に対人関係の在り方が精神的な健康に及ぼす影響について研究しており,研究室では病理的なテーマに限らず思春期・青年期の対人関係に関するテーマについて研究している学生が多いです。

藤川 卓也 先生(ウェブサイト:研究者総覧,研究室)

 臨床心理学

波光 涼風 先生(ウェブサイト:研究者総覧,研究室)

 臨床心理学,認知行動療法を専門としています。抑うつ予防,親子支援(Parent Child Interaction Therapy :PCIT,Child-Adult Relationship Enhancement:CARE)に関する実践や研究も行っています。メインの研究テーマは,注射恐怖のメカニズムや心理的アプローチに関する研究を行っています。

■□基礎心理学と臨床心理学の違い□■

 例えば,錯視という現象があります。この現象はだれしもが経験しうるものであり,正常な生物学的反応でもあり,心理学的反応でもあります。こうしたひとの一般的なだれしもが経験しうる心理学的反応を心理量として測定し,反応の内容,起こり方などを研究して明らかにすることが基礎心理学といえるでしょう。
 うつ病などは,だれしもが経験する可能性はあります。しかし,特別な環境が整って,本人の持っている器質などの要素も複雑にからみあってうつ病を発症すると考えられています。ある種,病気のような状態にあっては一般的な対応では回復が難しく,その病気の理解,治療も含めて,発症前のもとに戻すというより,うつ病を発症するリスク要因を抱えながらどのように回復し,生活を取り戻すのかが大切になってきます。
 つまり,臨床心理学では,自己理解・自己成長も含めての回復の発想が必要になります。病気以前に戻す,悪い疾患部位を取り除いて健康状態に戻そうとする医学モデルの治療(Cure)とは違い,病気になる過程も自分自身であることを含めたケア(Care)を重視する学問ということになります。こうして説明すると,より難しさがありますが,最初に述べたように困った体験をした人々(日常の悩み,病気,障害など様々な困った事象)の助けになるような学問と考えることができます。それと同時に,他者の悩みを理解し,ひいては他者を理解しようとするには,自分のとらえ方の問題に気づくというプロセスを経る必要があります。より複雑になりますが,臨床心理学は,他者理解,そして自己理解を通した実学であると考えることができます。

■□広島大学の特色:公認心理師養成と臨床心理士養成において□■

 2017年9月15日に公認心理師法が施行され,心理学ワールドで初の国家資格が誕生しました。そして公認心理師カリキュラムとして学部25科目,大学院10科目,そのうち学部でも大学院でも学外・学内での実習時間が規定されました。公認心理師の資格取得に必要な科目名や実習時間はどこの大学・大学院でも同じです。でもどのような体験ができるか,そのような学びと技術の獲得ができるかは,それぞれの大学・大学院の特色によって違いがあります。
 広島大学では,長年の臨床心理士養成カリキュラムの運用を基盤として,大学院では公認心理師・臨床心理士のダブル資格の受験資格が得られるようにカリキュラム構成をしています。
 ダブル資格養成のカリキュラムでは,講義・演習・実習を有機的に融合していくように学年進行による適切な経験・知識の積み上げができるように科目設置の工夫をしています。
 学外実習では,これまでの臨床心理士養成のなかで培ってきた地域の病院,少年鑑別所等との信頼関係を基盤とした公認心理師・臨床心理士実習を行っています。
 広島大学の特色として広島県で創設された高校で,認知行動療法をベースとした高校生の学校生活をサポートする授業展開を授業者として経験できる実習も行っています。
 また,学内附属である心理臨床教育研究センター(こころの相談室)では,地域住民に開かれた相談室と同時に,大学院生の個別カウンセリング実習施設というティーチングクリニックとして位置づけられ,地域貢献活動としての臨床経験ができる体制になっています。相談室での個別カウンセリング経験は,地域住民の相談を有料で受け,個別に担当し,学外の指導者からスーパービジョンを受けられるようなシステムを構築しています。さらに,相談室での個別カウンセリング経験にスムーズに導入できるように専任教員指導のもと,「試行カウンセリング」を経験し,その試行体験も学外スーパーバイザーから指導を受けられるような体制を整えています。
 大学院修了後,臨床現場で活躍するようになっても,自己研鑽を積んでいく必要があり,クライエントや患者さんの相談を受け,こころのケアをする際には独善的になることは危険なことと考えられているため,スーパービジョンを受けることは自分の臨床技術や活動の質を維持するためにもとても大切だとされています。

■□心理学教室□■

 心理学教室は,基礎心理学から応用心理学まで幅広い学問を専門とするスタッフがそろっています。臨床心理学を専門とするスタッフだけでも,細分化されてそれぞれの臨床心理学としてのオリエンテーションも違い,研究フィールドも違っています。
 心理学教室では,こうした多様な研究フィールドを専門とするスタッフとの共同研究や研究室交流も行われています。
 なによりも教員間が仲良いという特徴もあります。
 ぜひ,一緒に心理学教室で学んでいきましょう。

PAGE TOP